貴金属の中で、熱と電気の伝導性が最も高いのが銀です。
これは、熱いコーヒーに銀のスプーンをいれると、びっくりするほどスプーンが熱くなることでも容易に感じられます。プラチナや金が化学的に不活性で、酸やアルカリ等に溶けないことにくらべると、銀は硝酸や硫酸に溶けてしまいます。しかし、ジュエリーとしての銀の性質でもっと知っていなくてはならないことは、銀が空気中の硫化水素や、水分中のオゾンや二酸化硫黄と反応して表面に硫化銀(Ag2S)を作り、表面が黒変したり、光沢を失っていくことです。これを銀の硫化といいます。よく間違えていわれることは(空気中の酸素と化合して、銀が酸化してしまう)ということですが、鉄さび等の酸素による酸化ではなく、硫化水素による硫化だということをしっかり認識したいものです。
この表面変化を嫌って、宝石店でうっているたいていの日本のシルバージュエリーには、ロジウムメッキがかけられています。ロジウムとはやはり金属の1種で、硬すぎて、ジュエリーの加工には使えないのですが、メッキで表面をおおうにはこの硬さがなによりいいのです。
しかし、銀でありながら、私たちの目に入るのはロジウムの表面なのですから、それを嫌い、銀そのものの表面を好む人も多く、欧米ではロジウムメッキされたものは少ないのです。